刑事マルティン・ベック

The Man on the Roof

1976年度 スウェーデン作品



原作    マイ・シューヴァル・ペール・ヴァールー『唾棄すべき男』
監督 ボー・ヴィーデルベリ


公開が1978年だから、私が18歳の時に観た映画になる。
当時高校生だった私は8ミリカメラ(もちろんフィルム(笑))で自主映画を撮っていた。
この年は「非常都市」といういわゆる刑事物の映画を撮っていた。「非常都市」※抜粋(※映像中の1976年制作は間違いです)
その最中に観たせいもあるのかもしれないが、印象に強く残っている映画である。
※この映画の影響で後年撮り足しをしたぐらい。

原作はマイ・シューヴァルとペール・ヴァールー夫婦の合作。
直ぐに原作の「唾棄すべき男」他シリーズ全10冊も全て読破したぐらいである。
監督はボー・ヴィーデルベリ。ベルイマン等と並び称されるスエーデン映画の巨匠との事。
最近、実に34年振りにDVDで見直す機会がありあらためてその質の高さと魅力に驚いた。
このスエーデン製の映画にはハリウッドで作られるスターや派手なアクションもないのだが、最後まで見せきる緊張感に包まれている。

ストックホルムの殺人科刑事ベックは太ったどこかさえない風貌をした男。
娘からは少々疎まれ、妻との関係もどことなく冷ややかで、そのせいかもっぱら家では帆船模型作りに没頭しているどこにでも居そうな中年の男。
そんな中病院で警官殺しが発生する。犯人は銃剣で被害者をめった切りにするという残忍な手口。
しかし、この殺された警官は有名な悪徳警官で不正や苦情が絶えない男だった。
映画の前半はベックや仲間達の日常や捜査が警察の抱える体質の問題も絡めつつ淡々と描かれる。
そして犯人が分かったと同時に一気に緊張感溢れる銃撃戦と逮捕劇へと盛り上がって行く。

特に印象に残っているのが犯人による屋上からの乱射が始まり、警察が突入しようとする下りでのワイドレンズの多様だ。
地下鉄のホームを疾走する二人の刑事を地面スレスレでとらえたカットは今でもはっきり覚えているし、実は先の「非常都市」の中でも何とかそれに近づこうと頑張ってみたカットもある。
そしてもうひとつ強烈に印象に残っているのが音楽である。ビョルン・J・リンドのかすれたようなフルートを主体にした硬質で乾いた音。

今回DVDには当時のスタッフインタビュー映像がつけられており、これも興味深かった。
現場は監督の独善的振る舞いで混乱していたことや撮影監督が三脚の使用を進言しても頑として監督は手持ち撮影することを要求したこと、ヘリの墜落シーンでは危険だと尻込みする
スタッフに変わり監督自ら落下するヘリを真下から撮影したこと、当時のスエーデン映画では初めてと言っていいスタントや弾着の苦労等々。

今観ても古さを感じない一級の作品だと思う。